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Dr.R 紹介
高い医療技術と獣医療に対する真摯な取り組みを行ない、飼い主さんへの配慮や気配り(飼い主さんと上手なコミュニケーションがとれる)、豊富なネットワークや謙虚さなどが、おもな判断基準として挙げられる優秀な獣医さんとしてご紹介されております。
常に飼い主さんの立場に立った、信頼のおける診療姿勢を重視した獣医師。
また、動物医療に関する各種講演の講師としても幅広くご活躍です。

=会陰ヘルニア=

 暦の上では春とはいえ、まだまだ寒い日が続いています。寒暖の変化が著しいこの季節は人も動物も体調を崩しがち。皆様いかがお過ごしでしょうか?今年は花粉の飛来が例年より早く、花粉症に悩む私は陰鬱な毎日を送っています。

 さて今回は雄犬におこる会陰ヘルニア(脱腸)についてお話致します。

 会陰ヘルニアは中 ~ 高齢の雄犬に起こる病気で、肛門周囲(通常は肛門の外側)からお腹の中の腸や膀胱などの臓器が脱出することをいいます。

 原因は中 ~ 高齢の犬の男性ホルモンの不均衡が、肛門周囲を構成する筋肉群(骨盤隔膜)を脆弱化させ、排便時の持続する腹圧によりその弱くなった筋肉群の間から腸が脱出(脱腸)を起こします。また、このホルモンの不均衡は雄犬の前立腺を肥大化(前立腺肥大)させ、慢性的な便秘や持続的なテネスムス(しぶり腹:残便感があり、繰り返し腹痛を伴い便意をもよおすもの)を起こさせることでこの病態に拍車をかけます。

 症状は直腸や結腸が脱出を起こし、その中に便が停留することで起こる便秘やテネスムスおよび慢性的な排便困難です。ヘルニア部位に膀胱が反転して脱出した場合には排尿困難な状態となります。この場合は放置しておくと尿毒症に進行するため注意が必要です。

病態が初期の場合は肛門の外側(通常左右どちらかの部位)に軟らかく押すとお腹に戻る突出が確認できます。重度になると内部に便が充満した硬結な塊となり、もはや押してもビクともしません。こうなってはほとんど排泄ができません。同様の状態で罹患犬が排尿困難な状態であれば、突出しているものは内部に尿を充満させた膀胱かもしれません。

診断は罹患犬の症状と上記の特徴的な外観で容易にできますが、病気の程度や脱出しているものが何かを確認するには、レントゲン検査や超音波検査および直腸の内診が必要となります。

治療法は外科的整復術が選択されますが、症状が軽度の場合には外科的整復を実施する前に残渣の少ない食事などを与える食事管理や便を軟化させる薬(便軟化剤)の投与を実施場合もあります。特にこの病気は高齢犬で起こることが多いため、手術に危険を伴うと判断される場合にはまずこの治療を実施します。

 外科的整復術は脱腸を起こしている部位のヘルニア孔(穴)を周囲の筋肉群を用いて塞いだり、睾丸を包んでいる膜(総鞘膜)を補填材として用いて整復する方法がとられています。脱腸が重度の場合には、結腸の一部を腹壁に固定する方法も同時に行われることもあります。通常、この整復手術と併行して去勢手術が実施されます。去勢手術の目的は、持続する男性ホルモンの不均衡によりヘルニアが再発するのを防ぐためと、前立腺肥大を軽減させるためです。

 この病気は整復手術を実施しても再発する可能性があるため、術後も食事管理を怠らず、必要であれば便軟化剤の持続投与を実施しなければならないこともあります。

 中 ~ 高齢の雄犬に頻発する病気です。お宅の愛犬がこの年齢に差し掛かっているのであれば、お尻の周囲に妙な膨らみや突出がないか確認することをお勧めします。

 

2009.03.02

 
 

Dr.R 連載コラム
「動物に関する健康・環境・社会・幸せを考える」

犬猫に関する事柄を動物医療最先端の専門家として、テーマ別にコラムを執筆して下さいます。コラムを通じ飼主さんにより高い知識をもって犬猫たちと接して頂きたいと願っております。

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