「パピートレーニング(無駄吠え)」
犬の「吠える」という行動には様々な意味があります。一般家庭で暮らす犬に多い「吠える」は催促と警戒ではないでしょうか。今回はこの2つについて考えてみましょう。
まず、催促で吠える場合について。これは小さい頃からのしつけが重要です。
犬は産まれた時から声を出し要求します。まだ目も見えないような子犬が声を発する時は「お腹が減った」「痛い」「寒い」くらいだと思います。そして目が開き歩くようになって離乳も可能な頃になると「遊んで!」など別の要求が増えてきます。その頃から人間の言葉や行動を理解するようになり、しかも順応性があるのでしつけを始めるのに最適です。
しつけ方法としては簡単です。要求や催促を聞き入れなければ良いのです。
「ここから出して」と言っていれば鳴きやむまで出さなければいい。「ごはん!ごはん!」と言っていれば静かに待つまであげなければいい。抱っこをしていて「降ろして」と言えば大人しく諦めるまで降ろさなければいい、単純なことです。いずれも「大人しくしていればいいんだ」と覚えさせればいいだけです。
そのためには前にも書いたようにサークルにいれて我慢をさせる時間が必要になります。あえて催促をしたくなる状況を作って我慢をさせる。そして学習させるのです。
サークルの中で子犬が最も鳴く時はかまって欲しい時だと思います。家族団欒している時にサークルにいると自分も輪に入りたくて鳴いたりします。こういう時は目を合わさずに声が聞こえないかのように完璧に無視をしましょう。しかし無視をしていても効果がない時には、犬に分かりやすくするために部屋から出て行くのが良いでしょう。また留守番をしていて帰宅した時に吠えていたら部屋に入らないことです。
部屋から出て行った場合でも帰宅をした場合でも、いずれも鳴き続けている間は部屋に入らず5分でも 10 分でも待って、1分くらい鳴きやんでいられたら部屋に入り褒めてあげましょう。
無視をするのは簡単な方法ですが、これに慣れてしまうと忘れがちになってしまうのが褒めることです。大人しく待っていられたらきちんと褒めてあげてください。
1回でも、もしくは家族の中の誰か1人でも要求を聞き入れてしまったら次からはもっと催促するようになります。「くんくん、きゅんきゅん」と鼻を鳴らしていたのが「きゃんきゃん、わんわん」と吠えるようになったり、諦めて鳴きやむのに時間がかかるようになります。どんなに可愛い子犬の鳴き声でも心して対応しましょう。
次に警戒で吠える場合についてです。これがなかなか厄介なのです。
様々なしつけ本に「小さい頃からいろいろな音や人に慣らしましょう」と書いてありますが、そんな事は承知の上でいろいろな場所へ連れて行き、いろいろな人に慣らし、いろいろな人が家に来ても、警戒心が強い子は吠えるのです。
確かに警戒心が芽生えていない子犬のうちに様々な音や人に慣らすことは大切なことです。インターホンの音に慣らすために家族が帰宅する時にもインターホンを鳴らして「インターホン=嬉しい」とインプットする事も大切です。しかし出会う音や人を選ばないと最初に「恐怖」とインプットされたものは大人になっても苦手になってしまいます。よくある例が子供に追い掛け回された子犬などです。
大型犬の方が子犬の時の成長がゆっくりで警戒心が出るのも遅く、子犬のうちに体験できることが多いためか小型犬よりは吠える子が少ないような気もします。また、体が大きい分怖がりの子が少ないのでしょう。しかしそれでもまったく鳴かないチワワもいれば、人見知りをするラブラドールもいるのです。
子犬によっては警戒心が芽生えていないはずの生後3ヶ月で来客に吠え始める子もいますし、3歳くらいまで全く吠えなかった子が出産で母性が芽生え警戒心が強くなった時から吠えるようになってしまう場合もあります。また 10 歳を超え目が悪くなったりして吠えるようになる子もいます。
同じ状況で同じように育っても、吠えている子の隣で全く吠えない子がいるのです。
このような犬達を見てきて、育てる環境はもちろん大切ですが、警戒心で吠えるのはそれ以上に持って産まれた性格なのだと私は思います。大げさな事を言えば、だから同じトレーナーが育てても盲導犬になれる子となれない子が出てくるのではないでしょうか。
それでは、吠えてしまう子をどうしたら良いか。
犬はテリトリー意識が強いですから、咄嗟に吠えてしまうのは 100 歩譲って仕方がないことだとしましょう。けれどそれを鳴き続けさせないこと。吠えることはいけないことだと飼い主が心に決め、犬に教える。
犬は自分のテリトリーでは強気に出ます。警戒心の強い子はテリトリーを守って吠えている場合もあります。また、散歩の最中で知らない人に吠えたりする場合は大抵気が弱い子が多く、飼い主とリードで繋がっていることによって強気になっている場合があります。ですから鳴く必要がないということを分からせてください。ボスはあなたです。あなたが「吠えなくて良い」とするべきなのです。あまりに吠えてうるさいからと抱っこをする人がいますが、気弱な子の場合は飼い主に守られる状況になって益々調子づくだけなのでやめましょう。
正直、イタチゴッコの様にエンドレスかもしれません。それでも諦めないことです。「もう仕方ない」と思った時点で、人間が吠えることを認めたということです。別室の見えない場所に閉じ込める、別に注意を引く音を鳴らす、どのような方法でもいいですから鳴き続けさせないように努力しましょう。
よく吠える犬の飼い主さんに多いのが「犬だから仕方がない」と諦めていることです。それを諦めず続けることで、吠える子にも「吠えたらいけない」と分からせることが出来るのではないでしょうか。
もともと犬は様々な作業をするために作出された場合が多いです。吠えて家畜などを小屋に誘導する犬もいれば、猟などに出て獲物に気配を感じさせないように近寄り、獲物をしとめた時だけ吠えて主人に知らせる犬もいます。また獲物を見つけ出して一斉に吠えかかり、獲物が驚いて飛び出して来たところを狩猟するのに使われる犬達もいます。
これらの犬はその時、吠えるべき時に吠えるように教えられているのです。そしてもちろん無駄に吠えて家畜を驚かせたり獲物を逃がしたりしないようにもしつけられています。
しかしその各々に適するように作出した犬の中にもその作業に適さない個体もいます。必要なのは犬種としての性質、そしてその犬の性格を理解し教えること。
このように書くと難しいと思うかもしれませんが、私が言いたいのは「犬は吠えて当たり前」と言い訳をする飼い主さんに、それは違うよと言いたいのです。
しかも家庭の中で無駄に吠えないようにするのはもっと簡単なはずです。なぜなら「吠えるべき時と吠えてはいけない時」を教えるのではなく単純に「吠えたらいけない」と教えれば良いのですから。
「吠える」という行動は犬にとって必要不可欠なことかもしれません。しかし我々人間社会で心地よく共存するためには近隣の住人への配慮が当たり前。吠え続けてうるさいと思われないように努力をしましょう。
吠えることに限らず、犬のしつけも子供の教育同様、他人に迷惑をかけないように意識し、最低限のマナーを教えるのは当然のことではないでしょうか。
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2007.11.6 |